闇の美しさ
「リスナーに闇の美しさに耳を傾けるよう促した」
PitchforkはSparklehorseのことをこう評した。
SparklehorseとはMark Linkous率いるアメリカのバンドで、2010年にMark Linkousの自殺によりその活動の幕を閉じる。
その実大体がMarkのソロプロジェクトで、録音もほとんどMarkが自宅で一人で行っていた。
Markの死後発表されたコンピレーションを抜くと発表アルバムは4枚だったが、今年の9月8日にMarkの弟Mattと2人の義理の妹Melissa Moore Linkousのプロデュースにより、遺作となる5枚目のアルバム「Bird Machine」がリリースされた。
このアルバムのオリジナル音源はMarkが生前Steve Albiniとシカゴのスタジオで録音を終えており2009年にリリース予定だったらしい。
俺はSparklehorseがとても好きだ。
世界で1番好きなバンドと言えるかもしれない。
Markはずっとうつに悩まされていた。
そしてその懊悩がSparklehorseの世界には反映されている。
1996年のRadioheadとのツアー中にMarkはアルコールと薬物のODで心停止状態にまで陥り、一命を取り留めたものの、半年間の車椅子生活を余儀なくされてしまう。
1998年に発表された2ndアルバム「Good Morning Spider」に収録されている「Saint Mary」は当時入院した病院の看護師たちに捧げられた曲で、ゆりかごに揺られているような、牧歌的でもの悲しい曲となっている。
歌詞はなんとも言えないカオス。
そのなかに「血まみれのエレベーターでその日最初のお茶を飲むために上がっていく」という歌詞がある。
生きることの痛烈さと安穏さが短いなかに集約されていて、とても好きな詞だ。
Sparklehorseの世界は目眩がする狂気とメランコリー。
それを奏でるMarkの爪弾くフォーキーで牧歌的な優しいアルペジオに、小川のせせらぎのようなストローク。
聴いていると、木漏れ日のあわいのメロウな白昼夢に魂が包まれる。
「Rainmaker」や「Pig」のようなアッパーなロックチューンもひねていていい感じ。
5作目のアルバムが聴けるとは思っていなかったので嬉しかった。
最初はちょっとローファイさが薄まっちゃったかな?と違和感があったものの、2回聞くとどっぷり浸かることができた。
Markの子守歌のような歌声が紡ぐフラジャイルな薄闇の世界がまた広がった。
聴いていると星空を泳ぐような心地になる「Everybody's Gone to sleep」なんかとても綺麗。
「Kind Ghosts」では「Oh,where were you,my kind ghost When i needed you」なんて歌ってて嬉しい気持ちになった!
愛してます🐴✨
https://youtu.be/xjgWvASjvqs?si=BKAqHkGKJUbIfG6v